NEC FD1155D(5.25インチFDD)

5.25インチ2HDフロッピーディスクドライブFD1155Dについて。
整備したのはずいぶん前のことですが、せっかくその時に写真を撮ってあったので何かしら参考になるかと思い、まとめてみました。

○外観

上面
FD1155D - top

裏面
FD1155D - bottom

NEC PC-9801RA(1988年7月発売)に搭載されていた5インチ640KB/1MB両用FDDです。PC-9801VMからPC-9801DAまで、PC98中期の5インチFDDモデルによく内蔵されていたようです。
5インチFDDとしては後期の製品で、初期の製品と比べると制御回路の集積化や構造の簡略化などのコストダウン化が進んでいます。それでも重量は1kgほどあるため、誤って素足なんかに落とすと激痛が走ります。 この頃の製品らしく耐久性は高く、20年以上経った2011年現在でも読み書きが問題なくできます。
FD1155Dは長期間製造されていたためか製造時期によって制御基板や部品が多少異なるようです。

○コンデンサーを交換

FD1155D - Circuit board

位置 定格電圧 定格静電容量 直径 高さ
1 16V 47μF 5mm 7mm
2 16V 47μF 5mm 7mm
3 25V 33μF 5mm 7mm
4 25V 33μF 5mm 7mm
5 16V 47μF 5mm 7mm

使われていたコンデンサーはすべてニチコン製のスルーホール型アルミ電解コンデンサーでした。裏面のスピンドルモーターの近くにあるコンデンサーは25V/4.7μFです。

○潤滑剤を塗り直す

シークモーター、スピンドルモーター、イジェクト機構の駆動部分に潤滑油などを塗ります。私はミシン用オイルとシリコングリース(素材潤滑用)を併用しました。

○シールドを付け直す

FD1155D - Drive Head

ヘッドにはシールド(金属製のカバー)が付けてありますが、経年劣化で接着力が弱まり外れることがあるようです。シールドが外れているとそれが邪魔してフロッピーディスクが挿入できなくなったりします。シールドがなくてもとりあえず動作するので取り除いてしまってもいいのですが、周辺にわずかでも電磁的な影響を及ぼすのは確かなので、付けておいたほうが無難です。私は銅箔テープを使って接着しました。銅箔テープは何重にも重ねて厚みを付けておきます。そうしないとヘッドとディスクの記録面に隙間ができて、読み取り・書き込みエラーの原因になります。

FD1155D - Drive Head

○仕様 (海外NECのFD1155Cの仕様ページから引用)

動作モード 高密度(2HD) 標準密度(2DD)
未フォーマット時の容量(MFM) 1.6MiB 1.0MiB
未フォーマット時の容量(FM) 0.8MiB 0.5MiB
データ転送速度(MFM) 500K bits/s 250K bits/s
データ転送速度(FM) 250K bits/s 125K bits/s
ディスク回転速度 360rpm 300rpm
トラック数 77tracks 80tracks
トラック密度(tracks/inch) 96tpi(Read/Write)、48tpi(Read)
ビット密度(bits/inch) 9,646bpi 5,922bpi
記録方式 MFM、FM
トラック間移動時間 3ms
ステップセトリング時間 15ms
動作時の消費電力 4.8W
MTBF 12,000時間(総通電時間(POH))
電源 DC +5V/+12V
寸法 高さ41mm、幅146mm、奥行き203mm
質量 1.5kg

FD1155CはVFO(クロック/データ分離回路)無しで、FD1155DはVFO搭載。
ピン割り当てはこちらを参照。FDDインターフェイスのピン割り当て [PC/AT +2]
ただし3.5インチFDDについてはPC98用にカスタマイズされた個体が存在するため、このリンクの内容は参考になりません。

○ジャンパ/ストラップスイッチの設定

スイッチ名称 機種別の設定 設定の意味
x NEC PC98 IBM互換機 x
RD 2 1 Read Data信号のVFO回路の使用(1=無効、2=有効)
USE 1 2 ヘッドロード機構とIn Use信号(1=Head Load、2=In Use)
MON 1 1 モーター制御方法(1=Motor On、2=Head Load、3=Drive Select)
DX 0/1 1/1 or 0/1 ドライブ番号
VC On On 信号線の終端抵抗の有無
DCG 1 2 34ピン信号(1=Ready、2=Disk Change)
HDE 1 1 標準密度モード時の回転速度(1=360rpm、2=300rpm)
DEN 1 1 動作モード(1=2モード切替、2=標準密度、3=高密度)

PC98後期の一部の機種ではマザーボードにVFO回路(uPD71065Gなど)を搭載している場合があります。その場合はドライブ側のVFO回路は無効にして下さい。

○PC98で主に使われる5.25インチフロッピーディスクの物理仕様

物理仕様 FDDインターフェース読み書き対応
媒体の種類 回転速度 トラック密度 記録方式 転送レート ビット密度 面数 容量(U) 320KB 640KB 1MB 640KB/1MB
5.25" 1D 300rpm 48tpi MFM 250Kbps 5536bpi 1 250KB R/W R x R
5.25" 2D 300rpm 48tpi MFM 250Kbps 5876bpi 2 500KB R/W R x R
5.25" 2DD 300rpm 96tpi MFM 250Kbps 5922bpi 2 1.0MB x R/W x R/W
5.25" 2HD 360rpm 96tpi MFM 500Kbps 9646bpi 2 1.6MB x x R/W R/W

IBM PC/ATの5.25インチ2HCドライブでは1Dまたは2Dフロッピーの読み取りで300rpm/250kbpsの代わりに360rpm/300kbpsを用います。PC98においても同様と思われます。

○類似品一覧

製品名 型名 記憶容量(MB) 発表年 備考
8インチフロッピィディスク装置 FD1165 1.6 1981年 2D(1.2MB)ディスク対応、薄型
5.25インチフロッピィディスク装置
(FD1050シリーズ)
FD1053 0.5 ? 2D(320/360KB)ディスク対応
FD1054 0.5 1987年 FD1053の後継製品
FD1055 1.0 1984年 2DD(640/720KB)ディスク対応
FD1057 1.0 1987年 FD1055の後継製品
FD1155 1.6 ? 2HD(1.2MB)ディスク対応
FD1155B 1.6/1.0 ? 速度切替型
FD1155C 1.6/1.0 ? 単一速度および速度切替型
FD1155D 1.6/1.0 ? FD1155CのVFO内蔵型
FD1157C 1.6/1.0 1986年 FD1155Cの後継製品、やや軽量化
FD1157D 1.6/1.0 1986年 FD1157CのVFO内蔵型
FD1158C 1.6/1.0 ? 薄型(高さ25mm)、押しボタン式排出機構
FD1158D 1.6/1.0 ? FD1158CのVFO内蔵型
3.5インチフロッピィディスク装置 FD1034 0.5 ? 1D(160/180KB)ディスク対応
FD1035 1.0 1984年 2D(320/360KB)ディスク対応
FD1036 1.0 ? 高さ30mm
FD1037 1.0 1987年 薄型(高さ25mm)
FD1135 1.6/1.0 1985年 2HD(1.2MB)ディスク対応
FD1136 1.6/1.0 ? 2HD(1.2MB)ディスク対応、高さ30mm
FD1137 2.0/1.6/1.0 1987年 薄型(高さ25mm)、1.44MB対応(FD1137H)
FD1138 2.0/1.6/1.0 ? ?
FD1139 2.0/1.6/1.0 1991年 ノートPC用小型(高さ15mm)
FD1148 2.0/1.6/1.0 ? ?
FD1231 2.0/1.6/1.0 1995年 PC/ATデスクトップPC内蔵用標準サイズ
FD1238 2.0/1.6/1.0 1995年 PC/ATノートPC内蔵用標準サイズ

この一覧は私が把握している限りの製品のみを掲載しており、NEC製のすべてのFDDを網羅しているわけではありません。
3.5インチFDDについてはA,C,D,H,Tなどのバリエーションを入れるのが面倒だったので考慮していません。バリエーションによって対応する記憶容量や機種が異なります。
PC98と互換性があるかどうかはHAMLINさんのホームページを参照してください。

○NECのプリンター装置・ディスク装置の雑誌広告(日経コンピュータ 1985年8月5日号)

Advert of NEC OEM equipments for computers

○とても参考になるサイト


移転前のブログ記事コメントより (2コメント)

余計なお世話ですが、いくつか情報を。 (試運転)
2013-08-17 21:30:16
こんばんは

上記の「ジャンパ/ストラップスイッチの設定」について
「VC」ですが、これは終端抵抗の有効/無効らしいです。(ショートで有効)
オープンにしてしまうとヘッドが暴走するそうなので注意です。
ttp://ematei.web11.jp/kenkyu/fddsw5.html#fd1155d

それとドライブ番号ですが、AT互換機では0、1のどちらかを規格上は選べますが、「1」にした方が無難かと。
理由はこちら
ttp://ematei.web11.jp/kenkyu/fdi.htm

最後に、2DDフロッピー使用時の回転数ですが、360rpmの可能性が高いようです。
ttp://ematei.web11.jp/kenkyu/useatfd.txt

FDDに関する情報は、「エマティなリサイクル」さんも合わせてご覧いただくと、より幸せになれると思います。
(HAMLINさんのページにはない情報が、結構転がってたりします)
ttp://ematei.web11.jp/index.html
情報ありがとうごじます (kari)
2013-08-18 23:13:47
試運転さん、いつも助言ありがとうございます。参考になります。

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