N88-日本語BASIC(86)での日本語入力 [PC98]
NEC PC98のN88-BASIC(86)に関する情報はネット上にはほとんど見当たりません。そこで今回はN88-日本語BASIC(86)の日本語入力システムについて触れてみようと思います。
○BASIC上で日本語入力を行うために必要な条件
- 漢字ROMの装備
- 縦400ドット(ライン)の高解像度ディスプレイの接続
- 日本語入力方式の選択(Ver.4.0以降)
- 日本語辞書ファイルの使用準備(JIS16進コード変換方式を除く)
- 利用者定義文字格納ファイルの作成と更新(必須ではない)
○漢字ROMについて
PC98で日本語文字を画面に出力させるためには、PC本体に漢字ROM(漢字のフォントパターンが記憶されているメモリチップ)が実装されている必要があります。漢字ROMにはJIS第一水準および第二水準の2種類があります。
PC-9800シリーズのほとんどの機種はこれらの漢字ROMを標準で実装していますが、次の機種については別売の漢字ROMが必要です。
- PC-9801/E - 第一水準、第二水準とも実装していない
- PC-9801F/M - 第一水準のみ標準実装
○ディスプレイについて
ディスプレイに日本語文字を表示させるためには縦400ドット(ライン)の高解像度ディスプレイが必要です。PC-8800シリーズなどで使用されている縦200ドット(ライン)の標準解像度ディスプレイでは日本語文字を表示させることはできません。
○かな漢字変換の方式について
N88-BASIC(86)での日本語入力は主に辞書ファイルを使ったかな漢字変換方式とJIS16進コード変換方式に分けられます。かな漢字変換方式は、現在のPCのように読みがなを入力してそれを漢字に変換する方式です。JIS16進コード変換方式は16進数のJISコードを入力して1文字ずつ漢字に変換する方式です。
JIS16進コード変換方式では辞書ファイル(ディスク)は不要です。また、ROM-BASIC上でも変換できます。JISコードはシフトJISではない方のJISコードです。JISコード一覧表はPC98のマニュアルではBASICリファレンスマニュアル、ハードウェアマニュアル、日本語入力ガイドなどに記載されています。
かな漢字変換方式では辞書ファイル(ディスク)が必要です。また、ROM-BASIC上では利用できません。ひとくちにかな漢字変換と言っても、この頃の日本語入力システムはまだ発展途上で、バージョンアップを重ねるにつれて機能や使い勝手が大きく向上していきました。
変換方式/Ver. | 2.0 | 3.0 | 4.0 | 5.0 | 6.0 |
表示選択変換 | O | O | - | - | - |
単文節変換 | - | O | O | O | O |
連文節変換 | - | - | O | O | O |
逐次変換 | - | - | - | O | O |
AIかな漢字変換 | - | - | - | - | O |
Ver.3.0ではシステムディスクにKANJI.DICのみを入れておくことで表示選択変換方式での日本語入力が可能です。搭載メモリやディスクの容量が限られた環境で使うといいでしょう。Ver.4.0以降ではユーティリティーのsetup.n88からシステムディスクの属性を変更することで日本語入力方式を選択できます。(後述)
○日本語辞書ファイルの使用準備
かな漢字変換方式で使う辞書ファイルは変換方式やメディアの種類によってディスクへの収録方法が違います。収録方法が違うと使用方法も変わってきます。収録方法別に使用方法をまとめてみました。640KB FDは5インチ2DDまたは3.5インチ2DD、1MB FDは8インチ2D、5インチ2HD、3.5インチ2HDのディスクを指します。
変換方式/媒体の種類 | 640KB FD | 1MB FD |
表示選択変換 | 1 | 1 |
単文節変換 | 2 | 1 |
連文節変換 | 2 | 1 |
逐次変換 | 2 | 2 |
AIかな漢字変換 | 3 | 2 |
- システムディスクにDISK-BASICと辞書ファイルが一緒に収録されています。(または、一緒に収録できます。)1台のフロッピーディスクドライブにシステムディスクを入れるだけで、かな漢字変換機能が使えます。
- DISK-BASICのシステムディスクと辞書ファイルが収録された辞書ディスクで構成されています。かな漢字変換機能を使うには2台目のドライブに辞書ディスクをセットしておく必要があります。1台のドライブでかな漢字変換を使う場合は、システムディスク・データディスク・辞書ディスクを必要に応じて入れ替えて運用することになります。
- 辞書ファイルが2枚のフロッピーディスクに分割で収録されています。そのままではかな漢字変換機能を使えません。固定ディスクに辞書ファイルを作成(結合)する必要があります。
○日本語入力属性の設定
Ver.4.0以降では日本語入力方式と辞書ファイルのドライブを選択・設定できます。設定はシステムディスク毎にディスク内の特定の領域に「システムディスク属性」として保存され、DISK-BASIC起動時にこれが読み込まれる仕組みです。
システムディスク属性を設定するには、N88-日本語BASIC(86)のシステムディスクから「run "setup.n88"」(セットアップユーティリティ)を実行します。
○日本語入力で使うキーについて
日本語入力で使うキーの割り当てはVer.6.1以前とVer.6.2以降で大きく違います。Ver.6.1以前の場合は下の表の「従来方式」のキー割り当てになります。Ver.6.2以降については、標準設定では下の表の「標準方式」のキー割り当てになりますが、日本語入力属性の設定で従来方式に切り替えることができます。また、MS-DOSのNECAIKEYコマンドのように任意のキー割り当てを設定することもできます。
/ | 従来方式 | 標準方式 |
日本語入力モードのON/OFF | CTRL+XFER | CTRL+XFER |
漢字への変換 | XFER | XFERorスペース |
文字の一括確定 | スペース | リターン |
同音語次候補の表示 | XFER | XFER |
同音語前候補の表示 | ↑ | SHIFT+XFER |
文節右移動 | リターン | ↓orNFER |
文節左移動 | - | ↑ |
文節延長 | CTRL+→ | CTRL+→ |
文節縮小 | CTRL+← | CTRL+← |
カーソル右移動 | → | → |
カーソル左移動 | ← | ← |
逆変換 | ESC | ESC |
見出しの消去 | ESC | ESC |
カーソル直前の文字の消去 | DEL | BS |
カーソル位置の文字の消去 | - | DEL |
ローマ字入力のON/OFF | カナorF10 | F10 |
キーシフトをひらがなに設定 | F3 | SHIFT+F6 |
キーシフトをカタカナに設定 | F3 | SHIFT+F7 |
キーシフトを英数字に設定 | F2 | SHIFT+F8 |
全角/半角の切り替え | F6 | SHIFT+F9 |
直接/間接入力の切り替え | F1orF10 | F10 |
コード入力モードの設定 | F10 | F10 |
部首選択モードの設定 | CTRL+F1 | - |
ひらがな変換 | SHIFT+F1 | F6 |
カタカナ変換 | SHIFT+F3 | F7 |
英数変換 | SHIFT+F2 | F8 |
半角変換 | SHIFT+F4 | F9 |
単語登録 | F8orF10 | F10 |
登録単語の削除 | F9orF10 | F10 |
拡張機能 | F10 | F10 |
○参考文献
- 月刊アスキー 1985年9月号、株式会社アスキー、1985年
- PC-9801VX BASICユーザーズマニュアル、日本電気株式会社、1987年
- N88-日本語BASIC(86)(Ver.6.2) ユーザーズマニュアル、日本電気株式会社、1991年
- N88-日本語BASIC(86)(Ver.6.2) 日本語入力ガイド、日本電気株式会社、1991年