PC-9801RA RDFキーボードを分解する
PC-9801RAに付属するキーボード(通称RDFキーボード)を分解する。
NEC PC-9801RAは1988年7月に発売されました。それまでのメインストリームであったPC-9801VX21と比べて、デザインが大きく変更されました。本体のサイズは横幅が4cm、奥行きが1cm縮小され、前面パネルは丸みを帯びたイメージになり、色は白に近いグレー「ニューホワイト」になりました。
キーボードは従来の3.5インチ機とほぼ同じサイズになり、PC-9801VXのキーボードと比べて小さくなりました。OS/2のマルチタスクに対応するため、シフトロックとカナロックはソフトウェアで制御できるようになりました。また、新たに「VFキー」というファンクションキーが5個追加されました。これはPC-98XA(1985年5月発売)やEWS4800(1986年9月発売)のキーボードとほぼ同じ配列です。
○PC-9801RA2/5 (1988年7月発表)(RA2: 498,000円、RA5: 736,000円)
(月刊アスキー 1988年9月号)
○RDFキーボードの主な仕様
型番 (Model) | 不明 |
部品番号 (P/N) | 不明 |
メーカー | 日本電気株式会社 |
製造時期 | 1988年 - 1993年 (推測) |
配列 | 独自配列 (JIS C 6226準拠) |
キーの数 | 121 |
キーロールオーバー | Nキーロールオーバー (全押しOK) |
接点の種類 | メカニカル スイッチ |
接点のメーカー | 日本電気株式会社 |
主な制御チップ | NEC μPD8749HC |
インターフェース | ミニDIN8 (PC-9800シリーズ専用) |
サイズ (WxDxH) | 43.5 x 18.0 x 3.4 (cm) |
重量 | 1.2 kg |
価格 | 30000円(?) |
○インターフェースについて
本体側のキーボードインターフェースは8251互換で、キーボード端子の8つのピンの内の2つのピンを電源、4つのピンをデータ(DATA、RDY、RTY、RST)として、シリアル通信でスキャンコードを受信します。シリアル通信は調歩同期で転送速度が19.2Kbps、データが8ビット、スタート/ストップビットが1ビット、奇数パリティで伝送されます。キーボードのLEDを制御するときはRST信号を使って下りコマンドを伝送します。詳細はアスキー出版の「改訂版 PC-9800シリーズ テクニカルデータブック」を参照して下さい。
○系譜
歴代のPC98付属キーボードはこちらの方のページが詳しいです。キーボードの大まかな変遷は、PC-9801(無印)→PC-9801E/F/M→PC-9801U→PC-9801V→PC-9801R/D/F→PC-9821前期→PC-9821後期(Win95対応)。PC-9801(無印)のキーボードはコネクタが標準DIN8ピンですが、それ以外はミニDIN8ピンで統一されているため、使い回しができます。ただしメーカーでは機種付属のキーボード以外の動作を保証していません。
○価格
単体で販売されていないため価格は不明ですが、同等品のPC-9801T-03(PC-9801T用フルメカニカルキーボード)が3万円しました。今からすれば高価ですが、当時は数万円のキーボードは珍しくありませんでした。以下に当時の一部のキーボードとその価格を挙げてみます。
メーカー | 品名・型番 | 発売年 | 定価 | 対応機種 |
Apple(*) | アップルキーボード(M0116) | 1987年 | 20000円 | Macintosh II |
Apple | アップルエクステンデッドキーボード(M0115) | 1987年 | 35000円 | Macintosh II |
アスキー | 親指君(OAword/98,OAshift/98)(*) | 1987年 | 78000円 | PC-9800シリーズ |
アスキー | ASkeyboard sono1(*) | 1988年 | 33300円 | PC-9800シリーズ |
アスキー | ASkeyboard sono2(*) | 1988年 | 8800円 | PC-9800シリーズ |
富士通 | JISキーボード(FMT-KB105) | ? | 30000円 | FM TOWNS |
日本IBM | 鍵盤(5576-A01型) | 1991年 | 25000円 | PS/55 |
ソニー | OADG日本語キーボード(KBY-333) | 1992年 | 25000円 | QuarterL |
※「Apple」は正確にはアップルコンピュータジャパン。
※「親指君」は日本語ワープロソフト「OAword/98」とキーボード「OAshift/98」のセット。
※ASkeyboard sono1はテンキー無し。ASKeyboard sono2はテンキーのみ。
日本IBM PS/55Z モデル5510Z/T
20万円を切った低価格DOS/Vパソコン。OADGリファレンスモデルであり、これに付属するキーボードが5576-A01として単体販売されました。
○写真
表
右上のロゴが「NEC PC-9801R」になっているのは、PC-9801Rシリーズ前期型(PC-9801RA2/5,RX2/5)に付属するキーボードです。PC-9801RA以降に発売された中で、前に挙げた機種以外のキーボードは、ロゴが「NEC PC-9800 SERIES」になっています(トップの写真を参照)。両者に構造の違いは無いと思いますが、PC-9801Rキーボードの方が優れているという意見をちらほら聞きます。
PC-9801Rシリーズ以降のフロントパネルとキーボードに使われている樹脂は黄色く変色しやすいらしく、例によってこの個体もかなり変色していました。下のリンクを参考にワイドハイターEX+キッチンペーパー+日光で実践してみたところ、かなり改善されました。でも、年を追う毎にまた黄色くなっていく・・・
古いプラスチックの黄変を戻すRetr0brite 実践 - かもめ〜る通信
カバーを外したところ
キースイッチは基板に半田付けしてある上に鉄板で固定されていて、外すことはできません。キートップは2色成型です。
後期のRDFキーボードは基板の裏側のみパターンが実装されていて、片面基板になっているのですが、こちらは両面基板になっています。もしかしてこれがRキーボードの使用感に影響しているのでしょうか。
基板裏側
キーボードボディ表側 M-698360。キーボードボディ裏側 M-698361。基板 TC-1076A、M-698384。
基板の裏に追加されたチップ
PC-9801Vキーボードにはなかったチップ。
基板にしわが寄って見えるのは、コーティングのむらによるものでしょう。
NEC製のメカニカルスイッチ
キートップを拡大
先に述べたとおりキートップは2色成型ですが、見た目ではわかりません。PC-9801Vシリーズのキーボードでは文字の部分がわずかに飛び出していたり、境目が見えたりしていましたが、技術の進歩で改善されたのでしょうか。
キートップの裏側
後期98キーボードのキートップ
PC-9821シリーズのキーボードのキートップ。
こちらは2色成型ではありません。印字は浸透印刷かと思われます。